cover image: TOPIX500 企業の 6 割が株主還元比率を採用 2023年度には 24 社が新たに「累進配当」を有報に掲げる

TOPIX500 企業の 6 割が株主還元比率を採用 2023年度には 24 社が新たに「累進配当」を有報に掲げる

23 Jul 2024

TOPIX500企業の6割が株主還元比率を採用 金融・証券市場・資金調達 2024 年 7月 23日 全 5頁 TOPIX500 企業の 6 割が株主還元比率を採用 2023年度には 24 社が新たに「累進配当」を有報に掲げる 金融調査部 主席研究員 中村 昌宏 [要約] 業績や株主資本に連動する株主還元方針を掲げる企業が増えている。TOPIX500 指数の 構成企業の有価証券報告書を調べると、「配当政策」に株主還元比率のある企業数は、 2013 年度の 181社から 2023年度には 296社に増えている。採用比率が 6割を超えたの は、集計した 2013年度以降では初めてである(2023 年度は上場廃止企業を除く)。 2023 年度は新規採用や拡充の動きが前年度を上回っている。2023年 3月末の東証によ る「資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請の影響が大き. [...] TOPIX500 企業の株主還元額は 10年で約 3倍に 主要企業において、業績の拡大に併せて株主還元が拡大している。東京証券取引所(東証)上 場の主要企業からなる TOPIX500 指数の構成企業のうち、直近 11 期間で決算期変更や未公開時 期のない 449 社合計の株主還元額(配当総額+自社株買い実施額)は、2013 年度の 8.3 兆円か ら 2023 年度には 2.8 倍の 23.6 兆円に増加した。この間、当期純利益も倍増(2.0倍)している ものの、それ以上に株主還元が強化されている(図表 1)。 先行きに関しても、堅調な企業業績から株主還元額が増加する期待も大きい。大和証券の主要 上場企業(全業種、210社)の業績見通しでは、当期純利益(「税引増益率」)は、新型コロナウ イルスの影響を受けた 2020年度を底に増益が続き、2024年度は前期比 5.2%増、2025年度は同. [...] 4割強が当期純利益の半分以上を株主に還元 集計ベースの前掲図表 1 は売上高や時価総額等の規模の大きい企業の影響を受けやすいが、 同図表 2 の個社ベースで見ても株主還元を強化する傾向がうかがえる。TOPIX500 指数の 500 社 それぞれについて、当期純利益に対する株主還元額(配当総額+自社株買い実施額)を表す総還 元性向を求めると、中央値は 2013年度の 28.7%から 2023年度には 45.6%に上昇している。 2023年度は、当期純利益の半分以上を株主に還元した(総還元性向 50%以上)企業は集計対 象の 44.4%に相当する 218社と、前年度(207社、41.6%)以上に積極的な還元姿勢の企業が多 かった。中でも、総還元性向が 100%を超える企業は 58 社と 2013 年度以降で最も多い。他方、 総還元性向の低いゾーンでは、「20%超 30%以下」と「最終赤字(当期. [...] 株主還元比率の採用率は 6割を超えるも、比率の取り下げも増える TOPIX500企業の株主還元は総じて拡大しているが、方針の表現には変化の兆しがみられる(図 表 3)。有価証券報告書(有報)に記載された「配当政策」の表現を見ると、2023年度に新たに 株主還元比率を採用した企業は 26社(2022 年度:25 社)と過去 10年間で最も多い一方で、比 率を取り下げる企業も 12 社(同 5 社)と増えている。株主還元比率の採用率は 2013 年度以降 で初めて 6割を超えたが、採用社数の純増は 5社(同 21社)に留まっている。 図表 3 有価証券報告書の「配当政策」で還元比率を示す企業数が 6 割に達する 年度 (注) 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 集計対象企業数 475 484 491 494 496 49. [...] 今後の展望 機関投資家の議決権行使基準が厳格化し、物言う株主(アクティビスト)による増配要求等の 提案が多くなる中、企業は引き続き資本コストや株価を意識した経営を行うこととなる。既に 株主還元比率の採用率は 6 割を超えているものの、新たに比率目標を採用する企業や株主還元 を拡充する企業数は今後も高水準で推移すると考える。 一方、外部環境の変化や成長投資への考え次第では、株主還元比率が高ければ良いというわけ ではない。成長投資への配分を厚くするため、株主への還元比率を下げる経営判断も増えてこ よう。また、株価をより意識した経営のひとつとして、業績の影響が相対的に小さい DOE(株主 資本配当率)、累進配当、1 株あたり年間配当金の下限設定等への方針変更を検討する企業が増 えそうだ。ただし、DOE・累進配当・下限の場合は、業績が拡大する場合での配当への影響が分 かりづらいため、配当性向等のよ.
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Japan
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60% of TOPIX500 companies adopt shareholder return ratios 24 companies will report a new “progressive dividend” in fiscal 2023 [from PDF fonts]

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