健保組合別の出生率動向 出生率分布の推移:被保険者は平行移動、被扶養者は上位が大幅低下 下表は、被保険者、被扶養者それぞれの健保組合ごとの出生率につき、各年度における出生率の上位 10%、25%、中央値、下位 25%、下 位 10%の値を取り、その推移を見たもの。 被保険者は、グラフが概ね平行移動しており、上位から下位まで概ね同程度の幅で出生率が上昇している。 被扶養者は、2015 年度ごろから、上位の出生率の低下幅が大きくなる一方で、下位の低下幅は比較的小さく、組合ごとの出生率格差は縮小 傾向にある。 健保組合ごと・年度ごとの出生率分布の推移 (注)被保険者・被扶養者それぞれにおいて、当該年度に 15~49 歳女性が 1,000 人以上いる健保組合が対象。 (出所) 大和総研健保データをもとに大和総研作成 14 / 33 3. [...] 健保組合別の出生率動向 所得と出生率の関係:女性の所得が高い組合ほど被保険者出生率が高い 下表は、健保組合別の平均標準報酬月額(賞与を含まない月給)と、出生率の関係を見たものである。 被保険者は、女性の平均標準報酬月額が 30 万円未満においては、それが高い組合ほど出生率が高くなる関係にある。 被扶養者は、男性(被保険者本人)の平均標準報酬月額と出生率に関係性が見いだせない。 平均標準報酬月額別の出生率中央値 (注) 被保険者・被扶養者それぞれにおいて、当該年度に 15~49 歳女性が 1,000 人いる健保組合が対象。男性の標準報酬月額が 20 万円未満の組合は存在しなかった。 (出所) 大和総研健保データをもとに大和総研作成 17 / 33 3. [...] 出生率決定要因の多変量解析 多変量解析の結果概要(先行研究がある説明変数) これまでの先行研究では、女性のキャリアと子どもを持つ希望の実現は二律背反だと捉えられていた。しかし、本レポートの結果を踏まえると、被保 険者に限れば、女性が働き続けやすく、キャリアを築きやすい職場ほど子どもを持ちやすいことが明らかになった。 先行研究で示されていた、一定所得以下の被扶養者における、出産育児付加金と出生率の間のプラスの関係は、本レポートでも確認された。一 方、被保険者においては、出産育児付加金と出生率に有意な関係がみられなかった。 男性の所得、首都圏在住者比率については、本レポートにおいても、先行研究と同様の結果となった。 多変量解析の結果(先行研究がある説明変数) 説明変数 先行研究 本 レポートの多変量解析結果 先行研究を踏まえた結果解釈 結果 文献 女性の所得 女性所得が高い世帯ほど. [...] 出生率決定要因の多変量解析 (参考)年齢の影響を可視化したグラフ 今回の被説明変数は、あくまで、女性の年齢分布を調整した出生率であるため、健保組合の被保険者平均年齢が子どもを持ちやすい時期にあた るかが出生率に直結するわけではない。だが、それでもなお、平均年齢、平 均年齢の二乗項は出生率の有意な決定要因となった。 被保険者の出生率は、女性被保険者の平均年齢が 40.4 歳のとき(年 齢効果として)最も高くなり、そこから離れるほど出生率が低くなる関係 にあった。多くの組合で女性平均年齢は 40.4 歳を下回るため、女性が 長く働き続けられる職場ほど出生率が高まるものと解釈できる。 被扶養者の出生率は男性被保険者の平均年齢が 44.9 歳のとき(年齢効果として)最も低くなり、そこから離れるほど出生率が高くなる関係に あった。被扶養者の女性の年齢分布が同じであるなら、配偶者の男性の年. [...] 出生率決定要因の多変量解析 業種の影響:格差が有意に確認できるケースが散見 収入や年齢を制御しても、業種間の格差が有意に確認できるケースが散見された。 被保険者においては、労働者派遣業において出生率へのマイナス影響が特に大きく、雇用の不安定さが要因と考えられる。複合サービス業に分類 される組合のほとんどは農林漁業団体であり、準公務員的な安定した雇用が出生率にプラスの影響をもたらしていると考えられる。小売業や運輸 業などで出生率へのマイナス影響が見られるのは、休日や夜間の勤務の多さが影響している可能性がある。 金融業・保険業は被扶養者の出生率へのマイナス影響が見られ、転勤の多さが影響している可能性がある。 各業種が出生率に与える影響(被保険者) 各業種が出生率に与える影響(被扶養者) 0.3 0.20*** 0.2 *** 0.15 *** 0.1 *** 0.0 0.10 -0.
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- Multivariate analysis of the birth rate of insured persons and dependents for each health insurance union and its factors in workplaces where women can build careers where it is easier to have children [from PDF fonts]
Table of Contents
- 健保組合ごとの被保険者被扶養者の出生率とその要因の多変量解析 1
- エグゼクティブサマリー 2
- 1本レポートのねらいと分析手法の紹介 3
- 健保組合ごとに出生率を分析することで子どもを持ちやすい職場の条件を探る 3
- 医療保険制度別の被保険者と被扶養者の出生率推計値の推移 3
- 1本レポートのねらいと分析手法の紹介 4
- 本レポートの分析対象は全健保組合の 20台後半の人数を直近でカバー 4
- 1549 歳女性人数の推移 4
- 2. DIR システム利用健保全体の出生率動向 5
- 大和総研受託健保の出生率の推移は健保組合全体の従来推計値と概ね一致 5
- 出生率の推移 5
- 2. DIR システム利用健保全体の出生率動向 6
- 年齢階級別出生率2529 歳で被保険者と被扶養者になお大きな差 6
- 年齢階級別出生率 6
- 2. DIR システム利用健保全体の出生率動向 7
- 年齢階級別出生率の推移被扶養者では 2029 歳の出生率低下が顕著 7
- 年齢階級別出生率の推移 7
- 2. DIR システム利用健保全体の出生率動向 8
- 大和総研受託健保の被扶養者の有配偶率も健保組合全体の値とほぼ一致 8
- 女性被扶養者の年齢階級別有配偶率 8
- 2. DIR システム利用健保全体の出生率動向 9
- 参考女性被保険者の結婚しにくさは解消に向かっている 9
- 女性被保険者の年齢階級別有配偶率 9
- 2. DIR システム利用健保全体の出生率動向 10
- 被扶養者の年齢階級別有配偶出生率29 歳以下と 30 歳以上で分かれる 10
- 年齢階級別有配偶出生率 10
- 2. DIR システム利用健保全体の出生率動向 11
- 参考被保険者の年齢階級別有配偶出生率の推計値 11
- 年齢階級別有配偶出生率 11
- 3. 健保組合別の出生率動向 12
- 出生率分布被扶養者ですそ野が広く極端に出生率が低い高い組合が存在 12
- 健保組合ごと年度ごとの出生率分布 12
- 3. 健保組合別の出生率動向 13
- 出生率分布の推移被保険者は平行移動被扶養者は上位が大幅低下 13
- 健保組合ごと年度ごとの出生率分布の推移 13
- 3. 健保組合別の出生率動向 14
- 被扶養者の出生率が高くても被保険者の出生率が高いとは限らない 14
- 被保険者出生率と被扶養者出生率の関係 14
- 3. 健保組合別の出生率動向 15
- 年齢階級別出生率の分布29 歳以下の被扶養者で分散が大きい 15
- 年齢階級別出生率の分布を示したバイオリンプロット 15
- 3. 健保組合別の出生率動向 16
- 所得と出生率の関係女性の所得が高い組合ほど被保険者出生率が高い 16
- 平均標準報酬月額別の出生率中央値 16
- 3. 健保組合別の出生率動向 17
- 業種と出生率の関係業種間に一定の格差が存在 17
- 業種別の出生率中央値 17
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 18
- 多変量解析の結果のポイント 18
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 19
- 多変量解析に用いたアプローチの概要 19
- 健保組合年度ごとの直 19
- 接観察できない時間 19
- 不変の固有の効果 19
- 定量分析のイメージ図 19
- 被保険者出生率 被扶養者出生率 19
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 20
- 多変量解析の結果概要先行研究がある説明変数 20
- 多変量解析の結果先行研究がある説明変数 20
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 21
- 多変量解析の結果概要先行研究がない説明変数 21
- 多変量解析の結果先行研究がない説明変数 21
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 22
- 被保険者と被扶養者で月収や出産育児付加金は異なる影響 22
- 各変数が出生率に与える影響被保険者 22
- 月収や出産育児付加金など被保険者と被扶養者で影響が異なるパターンが散見された 22
- 一方勤続1年未満比率と首都圏在住比率は被保険者と被扶養者で共通してマイナスの影響が確認できた 22
- 各変数が出生率に与える影響被扶養者 22
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 23
- 参考年齢の影響を可視化したグラフ 23
- 年齢の影響を可視化したグラフ 23
- 頂点40.4 歳 23
- 頂点44.9 歳 23
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 24
- 男性の平均月収が低いほど出産育児付加金は被扶養者の出生率にプラス 24
- 男性被保険者本人の平均月収ごとに見た 24
- 出産育児付加金が被扶養者出生率に与える影響 24
- 女性の平均月収ごとに見た 24
- 出産育児付加金が被保険者出生率に与える影響 24
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 25
- 各年度の影響被保険者と被扶養者で大きく異なる動き 25
- 各年度が出生率に与える影響基準2008 年度 25
- 出産女性の被保険者被扶養者の比率の推移 25
- 4. 出生率決定要因の多変量解析 26
- 業種の影響格差が有意に確認できるケースが散見 26
- 各業種が出生率に与える影響被保険者 26
- 各業種が出生率に与える影響被扶養者 26
- 5. 企業や健保組合として取り組むべき施策 27
- 被保険者女性が働き続けキャリアを築けるよう環境整備を 27
- 子どもを持った後も女性が働き続けキャリアを築けるよう職場環境 27
- を整備 27
- な選択肢を提示 27
- 子育て期の女性も責任ある仕事を担える体制を構築することを目指すべき 27
- 男性育休取得率など男性の家事育 27
- 児参加への貢献に応じて子ども子育て支援金の料率を増減させる など企業が自分事として取り組むようにする仕組みづくりが必要 27
- 5. 企業や健保組合として取り組むべき施策 28
- 被扶養者世帯収入増に向け配偶者手当等の制度改正を 28
- 健保組合企業が行う出産費用の 28
- 支援や家族手当などは女性が被扶養者となる世帯が子どもを持ちやすくする施策として効果を発揮している 28
- 出産女性の中で被扶養者が少数派になり被保険者の世帯との相対的な所得差女性所得の差による世帯所得の差 28
- が意識されやすくなったことが子どもをもう1人持つことが難しくなった要因 28
- 配偶者への手当を子どもへの手当や基本給に振り替えるなどして被扶養者配偶者の就 28
- 労を阻害しないようにするとよい 28
- 健保組合や企業として被扶養 28
- 配偶者を扶養する従業員に対して教育訓練費を補助したり再就職祝い金を支給したりすることにより扶養を脱する者が増えれば従業 28
- 員の世帯収入増と健保組合の財政改善を同時達成することができる 28
- 補論. 多変量解析の詳細 29
- 多変量解析に用いた変数の解説1 29
- 多変量解析に用いた変数の解説 29
- 補論. 多変量解析の詳細 30
- 多変量解析に用いた変数の解説2 30
- 多変量解析に用いた変数の解説続き 30
- 補論. 多変量解析の詳細 31
- 多変量解析における要約統計量 31
- 要約統計量 31
- 補論. 多変量解析の詳細 32
- 多変量解析の各変数が出生率に与える影響22 ページに関する補足 32
- 定量分析モデル間の推計結果の比較 32
- 参考文献一覧 33